伊勢佐木ミラノ座

こちらは管理人の伊勢佐木ミラノの見た映画を新旧問わず紹介するブログです。

ビジランテ

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個人的好み:★★★☆☆☆

一人観賞向け★☆☆☆☆☆家族・恋人観賞向け

考えさせられる★★☆☆☆☆エンターテイメント         


2017年制作の日本映画です。分野は社会派バイオレンス作品です。エロやグロ描写があるためレイティングはR15です。私は前情報なしで、出演者に大森南朋さんと桐谷健太さんの名前があったので内容がどうあれこの二人が出てるなら観たい位の気持ちで観ました。
ストーリーは簡単に説明すると、とある地方都市の有力者が亡くなり、その遺産を巡り三兄弟の息子達とそれを取り巻く人々の翻弄する運命が描かれています。
全体的に暗い印象で家族・恋人同士ではお勧めしない作品です。
ただ、映画自体を好きな人にはお勧めの映画です。一見すると遺産相続を巡る争いというジャンルを問わず新旧の映画でありふれた題材にみえ、兄弟同士や親族同士が争う場面は少なく、実はそこに主題を置いてなく、取っ掛かりにしている展開はいい意味で裏切られます。
逆に兄弟同士の争いだけならもっとつまらない映画になっていたでしょう。
この映画は兄弟の争いを取っ掛かりにして、30年間行方知れずだった長男の謎、市議会議員である次男の背後にある政治家達、デリヘル店長である三男の背後にいる暴力団の其々の利害争いが絡んでくる所に脚本の妙があります。
ヤクザの出てくる場面はありますが、それ以外はわざとらしい演出やセリフには感じず、不必要なセリフを削ぎ落として、リアリティを追求していく脚本と演出は北野武監督の「その男、凶暴につき」に似た雰囲気を感じました。

この映画を観ると映画の力として大事な要素の一つは「最初から最後まで目を離せない」作品であるという事を思い出させてくれます。
それは単にお金をかけた派手なアメリカのアクション映画という事ではなく。ジャンルや古今東西問わず脚本・役者・映像編集力の何れか又は三要素全てに力がある事です。

北野武監督の「その男、凶暴につき」も今でこそ認知と評価を得ていますが、人によって好みと評価が分かれる作品だと思います。
しかし主人公の刑事が変に正義、情熱、愛情を振りかざさず、不正を行っている根幹の問題が解決する事もなく、誰かが誰かを大きく救う事もできない結末に後味の悪さを感じる観客がいる反面、そこにリアリティーを感じさせる演出がなされてる点にもまたこの作品の「その男、凶暴につき」に通じるものを感じます。

キャスティングに関しても次男の妻役である元AKBの篠田麻里子さんは期待以上に人妻の色気を出しつつ、妻として母としての女性の逞しさを表現していましたし、影の指示役である嶋田久作さんは相変わらず静かな不気味さを醸し出していて、実質主人公である桐谷健太さんは色気のあるかっこ良さを持つ男優さんになりましたね。